訪問看護に花は咲く1

今年86歳になるAさんは一人暮らし。カラオケ大好きな明るい女性です。でも、最近は心臓が悪いため、歌っているとしんどくなると、カラオケには行っていません。
家には今は懐かしいカセットテープがいっぱいあり、「私は演歌はキライ。ポップスが好き。」と、たくさんのカセットが並びます。
私にも、持って帰って、聞きと勧めてくれますが・・・。
そんなAさんの最近のお気に入りは、NHKの震災復興ソングの「花は咲く」です。
この歌がお好きな高齢者の方は多いのですが、サビの部分以外は高低差があり、歌うには少し難しいのです。Aさんは、友人に頼んで、カセットテープに「花は咲く」の色んなバージョンを吹き込んでもらっていますが、「これは難しいから聞くだけや」と、やや後ろ向き。
私が「この歌、私も好きやし、一緒に歌おう」と、テープに合わせて歌うと、「あんた、おもしろいなあ。私も、頑張るわ」と、原稿用紙に向かい、マジックで歌詞を書き写してくれました。普通の歌詞カードでは小さい字なので、見えにくいからと書き直して見やすくされました。ふだんは「物忘れがあって困るわ~」と、言っているAさんですが、すらすらと、漢字を織り交ぜながらきれいな字で書けました。
そして、新しい曲を覚えようという前向きな気持ちになり、知り合いのカラオケに行って見知らぬ人も巻き込んで一緒に「花は咲く」を歌ったというオマケ付きです。ちょっとしたきっかけで、人は元気になるものですね。私たちナースは「ちょっとしたきっかけ」を日々の訪問の中で見つけていきたいです。

*Aさんは、介護保険の要介護1.週1回の訪問看護で病状観察や服薬管理(主治医から処方された薬がきちんと服薬できているかの確認)1時間の訪問をしています。ヘルパーさんには週2回来てもらって、買い物や掃除の援助を受けておられます。