訪問看護に花は咲く33

今回ご紹介するのは、北区にお住まいのTさんです。

50年間ホテルマンとして仕事を続けてこられたTさんは、とても素敵な紳士です。70歳の時に、奥様の体調が悪くなり、仕事を退職され、家事全般を担われるようになりました。

私たちは、徐々に病状が進行する奥様の訪問看護に入るようになり、献身的なTさんの姿を見てきました。食事も手作りで奥様思いのTさん。そんなTさんも、数多くの病気を持っておられます。一度入院された事をきっかけに、Tさんにも訪問看護が入るようになりました。ご自分の体調が悪い中、睡眠時間を削ってでも、奥様の事を最優先にされるTさん。困っている事が無いかと、身体の負担のないようにとサービスを勧めても、「大丈夫です。これくらいはできます。」といつも気丈にされていました。

奥様の介護をされるようになって、20年が経過した2015年10月、奥様が入院されることになりました。そして、「病院で、自分がくるのを待っているから…」と毎日欠かさず(受診の日や用事があっても)面会に行かれています。奥様は、Tさんの顔をみると、とてもほっとした優しい表情になるそうです。「声は出にくくなったけど、顔の表情でわかる。」と言われます。「唇が荒れているから、リップを塗ってあげる」「手が冷たいから、さすったりマッサージをしたりする」と病院での奥様のことを教えてくださいます。

そんな奥様のことを話されているTさんの表情もまた、穏やかで優しいのです。お互いを必要とされていることが滲み出ている素敵なご夫婦です。私たちは、訪問看護師としても、ひとりの人間としても、Tさん夫婦からたくさん教えていただきました。まだまだ続く介護生活、無理のないように私たち訪問看護にもサポートさせてくださいね。