寄り添うこと・・・(39)

介護保険はすべての国民を対象に

2000年の介護保険制度開始から介護保険制度改定のたびに保険給付の削減、保険料や利用者負担の引き上げが繰り返されてきました。政府、厚労省において2018年実施に向けて介護保険制度の見なおしが検討されています。厚労省は2018年度介護報酬改定で要介護1・2の人に対するヘルパー生活援助を介護保険給付から外す方針を見送る一方で、生活援助に対する介護報酬引き下げを行うとしています。結果的にヘルパーの報酬引き下げになる可能性が高く、人材難に拍車をかけることになりかねません。

50歳台の男性で脳出血後遺症により要介護1の認定を受けた方がいます。一時期、生活の乱れにより飲酒量が増え、食欲低下、うつ状態により入院治療をしていました。退院後はヘルパーの調理援助を受けて、きちんと食事ができるようになりました。デイサービスでリハビリに取り組むことで歩行も徐々に安定してきました。「人がたくさんいるところはしんどい。」とデイサービスを利用するまで悩んでいましたが、スタッフに励まされてリハビリを続ける中で、気持ちも前向きになり、リハビリの増回を希望するようになりました。介護保険制度の改悪により生活援助の回数やデイサービスの利用が制限されれば食生活が不規則になり、栄養状態やうつ症状が悪化する可能性があります。本人は「前の職場の人に相談したけれど、まだ働くのは難しいといわれた。」と話しています。将来のことを考えていくためにも、日常生活をしっかりと支援していくことが必要です。一律の介護報酬削減や利用者負担引き上げとなどにより、介護サービスの利用抑制を図ることは重度化を招くことになりかねません。

日本の介護保険制度はドイツを参考にしたと言われています。日本の介護保険では40歳以上65歳未満の人については、同じような身体的障害でも16の特定疾病に起因するものでないと認められません。交通事故による身体障害では介護認定の基準に該当しません。ドイツでは年齢や障害の種別で対象者を区別せず、国民全員が介護保険の対象となっています。財源は保険料が中心で利用者の負担はありません。海外の制度を参考にするのであれば、ぜひ優れた部分を取り入れてほしいものです。