寄り添うこと・・・(1)
先日ある方から「私は認知症になっていませんか?最近 物忘れがひどくなったので」と聞かれました。
ご本人は大変しっかりされ、毎日日記を付けておられる方です。年齢の事もあって不安になられたのだと思いました。今回は認知症の方の支援についての経験をお話させて頂きます。
Hさんはご家族が認知症ではと気づかれた時、日付や時間がわからなくなり、同じ事を何度も聞く様になられました。訪問者や電話があった事も忘れ、一人で留守番が出来ない状態でした。
早朝散歩に行く習慣があり、今までは必ず自宅に戻って来られていましたが、ある日デイサービスの迎え時間になっても帰って来られず、捜索願いを警察に届けることになりました。地域包括支援センターの協力を得て、捜索網を市内全域に広げ、サービス事業所や地域の皆様、ご友人等に協力を得て探しましたが見つかりませんでした。翌日の昼過ぎ、警察からの連絡で他区におられることが分かり、ご家族が迎えにいかれました。その日にご自宅を訪問してご本人と面談させていただきましたが、一晩どこで過ごしたのか、何をされていたかなど、全く憶えておられませんでした。
後日、ご家族、サービス事業所、地域包括支援センターと一緒に、ご本人の詳しい一日の生活状況を共有化し、今後の方向性について話し合いました。施設入所についても相談しましたが、ご家族は「住み慣れたこの地域や自宅で、出来る限り長く生活させてあげたい」と希望され、それはご本人の意向でもあると判断しました。今はヘルパーやデイサービスを毎日利用されるようになり、GPS機能のついた携帯電話を所有される等、出来る限りの安全策を取って在宅生活を続けて頂いています。
今のサービスで問題は全て解決された訳ではありませんが、ご本人やご家族の「住み慣れた町で暮らし続けたい」という思いに寄り添った支援を続けていかねばと思っています。もちろんサービス事業者や地域の皆さんの協力を得てこその実現ですが。
認知症になって様々な周辺症状が現れてきても、しっかりと治療を続けていくことと生活そのもののサポート体制を築くことで、自宅での生活を続けていくことは可能です。そのためには様々な不安や希望、問題や課題を出し合って話し合うことが大切だと思います。そして地域の方々の協力や理解を得ることで、24時間365日の在宅生活が可能になるのではないかと思っています。