寄り添うこと・・・(41)

社会保障給付費は過去14年で約40兆円増加しています。しかし、国民所得に大きな変化はないといわれます。つまり、国民の負担は大きくなっているのです。少子高齢化という問題を抱えている日本社会で、現役世代の私たちが生活を脅かされながら、社会保険料を払い続けていかないといけないのでしょうか。それに加え、医療や介護などの社会保障を削減し、保険料や自己負担を増やすというのは、多くの高齢者やその分野で働く従事者の生活を脅かします。
『それは、困ります!』
どの世代にとっても、何一つ良いことはありません。

1945年に第2次世界大戦で敗戦し、1947年に日本国憲法が施行され、アメリカに占領されていた日本は、1951年にサンフランシスコ平和条約に調印しました。また、日本を外国の攻撃から守るために、米軍は日本各地の基地にとどまり、代わりに日本はアメリカに基地提供するという条約を結びましたが、1954年にはアメリカと対等な関係を目指し、自衛力を強化するため、自衛隊を発足させ、防衛力整備計画をスタートさせました。その時の首相が、現安倍首相の祖父である岸信介です。この条約は1960年に改正され、「外国からの武力攻撃に対しては、日本が協力して防衛にあたる」と定められました。当時、日本国憲法の第9条に反すること、日本を戦争にまきこむおそれがあることなどの点で問題となりましたが、引き続き米軍人の権利などを定めた日米地位協定までも締結されてしまいました。

現在日本は、米軍駐留費用の約75%を負担しています。金額にして約2,210億円の予算です。これは「思いやり予算」と呼ばれていて、既に40年ほど前から負担しています。これだけ莫大な費用を負担しているにも関わらず、日米安全保障条約には、もしも日本が他国に攻撃されても、アメリカが日本を守るとはどこにも明記されていないそうです。それどころか、基地の近くでは、犯罪だけでなく騒音・振動の問題、墜落事故などの危険もあり、住民の生活に支障をきたしている現状です。2016年からは5年間で約9,465億円が支払われることが決まっています。

少子高齢化という大きな問題を抱えた日本にとっては、社会保障の予算の拡充は大きな課題です。思いやり予算はもちろん軍事費自体が社会保障を犠牲にしています。軍事費や思いやり予算の削減により、もう少し社会保障予算に充当していくことを検討してみても良いのではないでしょうか。

寄り添うこと・・・(40)

介護職員の処遇改善は急務です

2025年には、介護労働者は現在よりも約100万人多い、237~249万人必要とされています。介護職員が必要な人数に対して、実際に何人が働くことができるのかという充足率の発表をみると、年を追うごとに低下していき、2020年には91%で約20万人の不足、そして2025年には85%にまで低下し、約38万人の介護職員が不足すると推計されています。介護職員の人材確保と処遇改善は緊急の課題です。

しかし、介護職員の賃金は、全産業労働者と比べて月額9万円も低く、働き続けることが困難で、生活のために職場を離れる人があとを絶ちません。2015年介護報酬改定は、マイナス改定の下で、処遇改善加算が追加されたにもかかわらず、多くの事業所で介護職員の処遇改善とはなっていません。

介護事業所は基本報酬が引き下げられ厳しい事業運営を強いられており、「このままでは十分な賃金を払えない。」「人材の確保ができず、事業所の努力だけでは安定的な運営が難しい。」「職員がいないので受け入れられるベッド数を減らして運営しないといけない」などの声が強く出されています。

介護現場ではたらく人が生き生きとして働き続けられるよう、国や自治体は公的な責任において改善をすることが急務です。そしてそれは安心して老後を迎えられる保障となるものです。

寄り添うこと・・・(39)

介護保険はすべての国民を対象に

2000年の介護保険制度開始から介護保険制度改定のたびに保険給付の削減、保険料や利用者負担の引き上げが繰り返されてきました。政府、厚労省において2018年実施に向けて介護保険制度の見なおしが検討されています。厚労省は2018年度介護報酬改定で要介護1・2の人に対するヘルパー生活援助を介護保険給付から外す方針を見送る一方で、生活援助に対する介護報酬引き下げを行うとしています。結果的にヘルパーの報酬引き下げになる可能性が高く、人材難に拍車をかけることになりかねません。

50歳台の男性で脳出血後遺症により要介護1の認定を受けた方がいます。一時期、生活の乱れにより飲酒量が増え、食欲低下、うつ状態により入院治療をしていました。退院後はヘルパーの調理援助を受けて、きちんと食事ができるようになりました。デイサービスでリハビリに取り組むことで歩行も徐々に安定してきました。「人がたくさんいるところはしんどい。」とデイサービスを利用するまで悩んでいましたが、スタッフに励まされてリハビリを続ける中で、気持ちも前向きになり、リハビリの増回を希望するようになりました。介護保険制度の改悪により生活援助の回数やデイサービスの利用が制限されれば食生活が不規則になり、栄養状態やうつ症状が悪化する可能性があります。本人は「前の職場の人に相談したけれど、まだ働くのは難しいといわれた。」と話しています。将来のことを考えていくためにも、日常生活をしっかりと支援していくことが必要です。一律の介護報酬削減や利用者負担引き上げとなどにより、介護サービスの利用抑制を図ることは重度化を招くことになりかねません。

日本の介護保険制度はドイツを参考にしたと言われています。日本の介護保険では40歳以上65歳未満の人については、同じような身体的障害でも16の特定疾病に起因するものでないと認められません。交通事故による身体障害では介護認定の基準に該当しません。ドイツでは年齢や障害の種別で対象者を区別せず、国民全員が介護保険の対象となっています。財源は保険料が中心で利用者の負担はありません。海外の制度を参考にするのであれば、ぜひ優れた部分を取り入れてほしいものです。