寄り添うこと・・・(3)

今回紹介させて頂くケースは、91歳で一人暮らしの要介護4の女性Aさん・・二人の息子さんが其々家族を持ちで京都のお住まい、しかしご本人の強い希望で一人暮らしを。
「一人暮らしが一番いい、息子達は時々顔を出してくれるし、きっと一緒に住むとなると気を遣う。私はまだまだ一人で何処でも行ける、歩けんようになったらペケ!その時は施設に入れてもらうつもり。ヘルパーさんはじめ皆さんにお世話になって毎日感謝して拝んでいます。」と、訪問時はいつも両手を合わせながら変わらぬ笑顔で話される。そんなAさんと息子さんとの会話はまるで掛け合い漫才のようにリズミカルで、思わず私の顔がほころびっ放し。

「母はどっこも悪くない、ただ・・困った事にオツムだけが悪い、そこだけ困っています。あっ、それと鼻も悪い!こげた臭いがわからんし火事とか心配です。」と話される息子さんの言葉は母への愛情がたっぷり、私の心を癒してくださる。

Aさんは約10年前に認知症を発症、直前の事を忘れ同じ事を繰り返し話す、ご近所さんにも少なからず迷惑をかけ、その都度家族が対応(お礼や謝罪)、大切な書類がなくなる等々、生活の中であらゆる問題がある中、何とか一人暮らしができている。もちろんAさんが長年かけて築いた「ご近所さん」の暖かい見守りと、私達が支援する介護保険のサービスをなくしてはこの生活はなりたたない。毎日朝夕にヘルパーさんが買物・調理・掃除・洗濯・汚れた衣類等の着替えのお手伝い、繰り返される同じお話や質問に気長に応え、ありのままのご本人を受け入れながら。そして週3回のデイサービスを利用、元来社交的なAさんはそこでもムードメーカーで、なくてはならない存在。ご本人も毎日でも行きたいと、利用日以外も鞄を持って外で待たれる事も…。

核家族化が進み、独居または高齢者世帯が増加。以前なら否応なく子供が仕事を辞めてでも面倒みる、嫁がクタクタになるまで介護する等々が当然だった。しかし介護保険サービスが始まり介護の社会化が安定した今、介護保険サービスを有効に利用することで、その人がその人らしく生活する事が出来るし、家族も大切な仕事を辞めなくて済む、そしてなにより家族は良好な関係を保つ事が出来る。その事を自負しながら、そして今後も継続する必要性を強く想いながら、私は日々利用者様宅を訪問し、耳を傾け、支援の方向を決めている。ご本人・ご家族の『ありがとう』の言葉に支えられて…。

寄り添うこと・・・(2)

京都生まれ京都育ちのMさんは、社交ダンスに旅行と多趣味で楽しく過ごしておられましたが、50歳を過ぎ糖尿病と診断されました。
70代後半になり、血糖コントロールが悪く、インシュリン療法を始めることになりました。しかしそのころから認知症の症状が出てきたため認知症薬が処方されるようになりましたが、服薬が全くできなくなり精神状態も不穏となりました。長男夫婦の部屋を覗く、嫁にお金を盗まれたなど被害妄想も出てきたため、主治医の先生や、薬局、デイサービス、兄弟や長男夫婦を交えた会議を何度も行いました。

Mさんの不穏の要因は何か、何が今大切なのかを話し合い、「服薬の管理とインスリン注射を徹底していこう」と決め、曜日ごとに薬、インシュリン担当を明確にしていきました。
それから6か月が経過し、Mさんは見違えるほどに穏やかな笑顔を取り戻し、他者との交流も楽しんで参加できるようになりました。その後、同居されている長男夫婦が自営業で多忙であること、また本人の希望でもあり施設入所が決定しました。
今では週末に長男が迎えに行き、自宅に外泊して過ごすなど家族との関係も良好となっています。家族も含めてMさんを支えるチームとして、生活の課題を共有化し、協力してその達成に取り組んだことで、Mさんらしい暮らしが実現できました。

本来の穏やかなMさんに出会えたことはケアマネジャーを担当させていただいて良かったと思えた一瞬でした。
この事例から、認知症のMさんへの支援を粘り強く取り組んでくれた介護スタッフの専門性への信頼、医療と介護の連携の大切さを感じることが出来ました。

寄り添うこと・・・(1)

先日ある方から「私は認知症になっていませんか?最近 物忘れがひどくなったので」と聞かれました。
ご本人は大変しっかりされ、毎日日記を付けておられる方です。年齢の事もあって不安になられたのだと思いました。今回は認知症の方の支援についての経験をお話させて頂きます。

Hさんはご家族が認知症ではと気づかれた時、日付や時間がわからなくなり、同じ事を何度も聞く様になられました。訪問者や電話があった事も忘れ、一人で留守番が出来ない状態でした。
早朝散歩に行く習慣があり、今までは必ず自宅に戻って来られていましたが、ある日デイサービスの迎え時間になっても帰って来られず、捜索願いを警察に届けることになりました。地域包括支援センターの協力を得て、捜索網を市内全域に広げ、サービス事業所や地域の皆様、ご友人等に協力を得て探しましたが見つかりませんでした。翌日の昼過ぎ、警察からの連絡で他区におられることが分かり、ご家族が迎えにいかれました。その日にご自宅を訪問してご本人と面談させていただきましたが、一晩どこで過ごしたのか、何をされていたかなど、全く憶えておられませんでした。

後日、ご家族、サービス事業所、地域包括支援センターと一緒に、ご本人の詳しい一日の生活状況を共有化し、今後の方向性について話し合いました。施設入所についても相談しましたが、ご家族は「住み慣れたこの地域や自宅で、出来る限り長く生活させてあげたい」と希望され、それはご本人の意向でもあると判断しました。今はヘルパーやデイサービスを毎日利用されるようになり、GPS機能のついた携帯電話を所有される等、出来る限りの安全策を取って在宅生活を続けて頂いています。
今のサービスで問題は全て解決された訳ではありませんが、ご本人やご家族の「住み慣れた町で暮らし続けたい」という思いに寄り添った支援を続けていかねばと思っています。もちろんサービス事業者や地域の皆さんの協力を得てこその実現ですが。

認知症になって様々な周辺症状が現れてきても、しっかりと治療を続けていくことと生活そのもののサポート体制を築くことで、自宅での生活を続けていくことは可能です。そのためには様々な不安や希望、問題や課題を出し合って話し合うことが大切だと思います。そして地域の方々の協力や理解を得ることで、24時間365日の在宅生活が可能になるのではないかと思っています。