訪問看護に花は咲く79
マスク品薄状態に思うこと
今年に入り、毎日「コロナ」「感染」という言葉を聞かなかった日はありません。
この間、アメリカでの新型コロナ感染による死者数は世界最多となり、日本でも各地で緊急事態宣言が出され、医療崩壊の危機が叫ばれるなど、重大な局面にさらされています。
物に恵まれ、何をするにも便利になった日本では、毎日平和で暮らせることがどこか当たり前になっており、この非常事態が今一つピンときていないこともあるかもしれません。
ただ、身近なところでいうと、「マスク不足」は深刻な問題として感じられるのではないでしょうか。マスクだけでなく、一時はなぜかトイレットペーパーまでも品薄となり、各店舗から姿を消してしまいました。かくいう私も、3月初めの「紙類品薄状態」の際にトイレットペーパー難民になってしまい(家族4人、翌日からの分がほぼなかった)、ただひたすらそれを求めてドラッグストアやホームセンターを何軒もハシゴしてしまいました。結局それは手に入らず、実家に頼み込んで少し分けてもらうことで事なきを得ました。
本当に必要なところに行き渡らない「買い占め」で、困る人も多いのにそれはなぜ起こるのか、ずっと疑問で少し調べてみました。…発端は、SNSで流されたデマであることは知られています。
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東京大学大学院で社会心理学を教える橋元教授は、このデマに踊らされ、『心理学的リアクタンス(心の反動作用)』=「人は自由を制限されている時に自由を回復したいと考え、制限されている物にされていない時より強い欲求を感じる」という説が働いているためではないかと説明しています。例えば、「被験者がレコード曲を4種類聞かされ、そのうちの1曲が入手困難だと告げられると、その曲に対する好みの度合いが上昇する」といった実験結果があるそうで、この作用の中でも特に買い占め行動との関連が指摘されるのが「希少性原理」だそうです。これは「限定商品」「残りあと一つ」と商品の希少性をあおると、購買希望者が増加するなど、セールスの現場でも応用されています。
さらに、そのマスクへの「希少性」を消費者の間で高めている要因として重要視されるのが、連日のメディア報道だと言います。中でもテレビの影響力は大きく、特定の話題を多く報道することで「このニュースは注目すべきテーマだ」などと世論を形成する「議題設定効果(機能)」という説が働くそうです。連日各報道や情報番組でトップ扱いで報道することで「日本で最も関心のあるニュース」「自分も今すぐ行動しなければ」という認識を人々に持たせ、思考回路の中でマスクが非常に大きな部分を占めるようにしているのです。これが逆に、視聴者の「マスクに危機感を持つべき」という認識を強化させているのだと言うのです。
では、消費者である私たちが冷静な行動をとるにはどうすべきでしょうか。橋元教授は、「実際にそれらが品不足になっているのか、需給状況の実態をメディアが正しく冷静に報道する必要がある」とした上で、消費者側も買い急ぐ前に「大量の買いだめは本当に必要か」と冷静に考えることが大切だと述べています。
「ITmediaビジネスONLⅰNE」より一部引用
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この緊迫した状況の中、新型コロナが少しでも早く終息することが今一番の願いですが、まだ見通しが立たず、時間がかかると思われます。しかし、さらなる混乱や医療崩壊を避けるため、今一度一人一人がよく考え、冷静に責任ある行動をとることが大切だと考えます。