訪問看護に花は咲く132
今年の夏も猛烈な暑さで、残暑も厳しく、ようやく過ごしやすい季節になってきましたね。
さて、今回は本のご紹介をいたします。
私は、よくラジオを聞くのですが、そのラジオから流れてきた本の紹介をたまたま聞いていて、この本と出会いました。
作家の西加奈子さん。2021年、移住先のカナダで乳がんの宣告を受け、周囲に支えられて歩んだがん治療の日々をつづられた著書『くもをさがす』。
ある日、乳房にしこりがあることに気付き、受診。検査を受け、治療が始まる。中でも、病院での医療スタッフとの会話が関西弁で書かれていることに、親近感がわき、どんどん読み進めてしまいました。そして、カナダと日本の医療の違いにもまた驚かされました。
一つ目は、著者の移住先のブリティッシュ・コロンビア州では、MSP(Medical Service Plan)と呼ばれる健康保険に入っていれば、医療がすべて無料で受けられ、外国人や留学生にも適応されるということ。(永住権・市民権保持者・ワーキングホリデービザで渡航する人は保険料が無料。学生ビザの人は月75ドルの保険料となっているそうです:バンクーバー留学センターHPより)
二つ目は、乳がんの手術が日帰りで行われるということ。術後、麻酔から覚め、意識がはっきりしてくると手術創から出ている管(ドレーン)の管理やドレーンにつながっている袋に溜まっている排出液の捨て方など、看護師から説明を受け、自宅へ帰るというシステム。その後は指示された日に、地域の医療センターに行き、看護師に創部のガーゼ交換をしてもらい、ドレーンからの排液量が減ってきた段階で、そのドレーンも抜いてくれるという流れだそうです。
この本の“終わりに“は、このような著者からのメッセージが記されています。
文中に登場した治療方法や薬、出来事に関しては、あくまで私個人の選択であり、経験であることを強調したい。がん治療は人によって違うし、効能や結果も違う。もし、今あなたががんに罹患しているなら、あなたにとってベストの選択をしてほしい。私の体のボスが私であるように、あなたの体のボスはあなただ。あなたが少しでも穏やかに過ごせることを、心から、心から、願っている。
日々の忙しさで、なかなか本を読む時間を作ることは難しいこともありますが、自分の知らない世界へ連れて行ってくれる読書はいかがでしょうか。