女性は低年金になりやすい?
年金が低いのは本人のせい?
公的年金制度は、20歳以上60歳になるまでの人が加入する国民年金(基礎年金)に、会社員らが加入する厚生年金が上乗せされる2階建て。だが、「男性が稼ぎ、女性は専業主婦」というかつての時代背景から、女性は結婚や出産を機に仕事を辞めることが多く、厚生年金の加入期間が男性よりも短かいこと。厚生年金保険料の元となる賃金が低いことなども重なり、女性の低年金状態につながっている。1階部分の国民年金の保険料を満額納めることに加え、2階部分の厚生年金をどれだけ長く、多く納めるかが、将来受け取れる年金額にも大きく影響する。「夫が働き、妻が家庭を守る」という価値観の中、女性は会社に勤めても簡単な労働しかできず、昇進もかなわず、賃金も低かった。男性優先の昇格など、働く上で女性であることによる差別があった上に、結果として女性の低年金をもたらした。低年金状態に悩む女性にとって「年金が低いのは本人のせいではないのでは?」
厚生労働省のまとめでは、年金受給額の平均は、男性がひと月16万6606円、女性が10万7200円(2023年度時点)。基礎年金のみだと男性は5万5649円、女性は5万2049円となっている。
問題となるのは、現時点で年金を受給している世代だけではない。厚労省が昨年7月に公表した年金に関する財政検証では、1964年度生まれ、74年度生まれの女性が65歳時点でもらえる年金額は、約6割が10万円以下となる見通しが示された。
女性の正規雇用が増えたが、継続して働けたり、管理職になったりする人の割合はまだ低い。年金額が格段に上がるわけでもない。女性の低年金の実態を把握し、対策を早急に考える必要がある。女性が結婚や出産、学んだり働いたりすることを自ら決め、設計できるような環境が重要である。国は、短時間労働者の厚生年金加入を促進するなどしているが、女性の低年金問題を解消するまでには時間がかかる。一方、5年に1度の今回の公的年金制度の見直しでは、目玉政策となるはずだった基礎年金の底上げ策は、今のところ2029(令和11)年以降に実施の判断を先送りする方針となっている。
老齢年金の年金月額分布の変化(生年度別)

生まれた年度別にみた年金月額の分布(女性)厚生労働省資料