訪問看護に花は咲く29


今回は、北区に住むAさんをご紹介します。

Aさんは博多のご出身。お若い頃、字の勉強のために京都に出て来られ、東京にも18年ほど住んでいたことがあるそうです。
Aさんの奥様は、左京区の息子さんが建てたバリアフリー住宅に住んでおられますが、Aさんは住み慣れた家を離れたくないと、独居生活を続けておられます。
2年ほど前から、病気のため歩行障害が進んだことから訪問介護の回数を増やし、歩行器を利用されるようになったそうです。

私たちとAさんとの出会いは今年の7月。Aさんの一日は、ご自分で決めた体操から始まります。その後、新聞を読んだり、食事を摂ったり・・・。ご自分のペースを大切にして無理せず生活されています。訪問看護の際、普段の状況や困ったことはないかお聞きすると、「前に比べたら本当に歩けんようになった」「あきませんわ」と言われますが、「いつ転んでもおかしくない」という危機感を抱えながらも、今でも歩行器を使って時間をかけて一人で通院したり、買い物に出たりされています。そして、趣味の版画製作にも取り組んでおられ、毎年東京の作品展に出品されているそうです。まだ私たちはAさんの作品は拝見できておらず、現在も東京に出品中のため、皆様にもご覧頂けないのが残念です。

まだまだAさんとのお付き合いの期間は浅いですが、訪問する度にAさんの温かいお人柄や、自立した生活を送るために日々努力されている姿に触れることができ、私たち自身が励まされたり、温かい気持ちを頂いています。
Aさんのように、進行性の疾患と向き合い、苦労しながら生活されている利用者さんはたくさんおられます。その苦悩は経験者でないとなかなか理解し難い部分もあるかと思います。しかし、私たち訪問看護師には、それを理解し、寄り添い共感していく姿勢が必要です。これからもほんのわずかでも、「看護師に来てもらってよかった」と感じてもらえるような関わりが続けていけたら・・・と思っています。