寄り添うこと・・・(4)

201312その日は突然きました。

86歳の母親と67歳の娘さんの2人暮らし。娘さんは52歳の時に脳梗塞で歩行障害と言語障害の後遺症を抱えてしまいました。
まだその頃70歳台で若かった母親(お母さん)は、ポータブルトイレを自分で使用できるように、オムツを使わず毎日毎日娘さんを叱咤激励しながら10年かけて5メートル程度の自力歩行とポータブルトイレが自立使用できるまでに回復し親子2人の穏やかな日々を過ごされていました。

H24年春、娘さんは脳梗塞で再入院、闘病生活がまた始まりました。
この頃のお母さんは85歳、腰痛や両膝関節痛で自宅内の歩行がやっと。とても娘さんの病室を訪ねたりする事が出来ませんので、主治医の先生から親族の方とケアマネジャーの私が病状をお聞きしました。主治医より「右手はリハビリで多少動くかも知れませんが両方の足で立つ事は無理でしょう」また「言語障害の回復も困難でしょう」との事でした。
今後退院して自宅で過ごす事が難しいと思われるお母さんに「今後は施設でリハビリしてもらいましょう」と説明し納得され入所する事になりました。自宅での生活はお母さんの負担が大きいのでもう無理ではないかと介護や医療スタッフは考えていました。
入所して10ヶ月経過した頃、お母さんより「娘を家に連れて帰る事は無理でしょうか!」と…また長年に渡り娘さんの歯の治療をされていたお医者さんより「このまま親子が一緒に暮らせないのは可哀想!最後にもう一度一緒に暮らせるようにするのは難しいですか!」と相談がありました。
「うーん困ったなー」と率直に私は思いました。その理由は、お母さんが倒れてしまうのでは…と考えたからです。3ヶ月間程かけてお母さんと介護の負担や自宅に帰る為に必要なサービス内容など話ました。お母さんとの面接で感じた事は、まだまだ迷いや不安が大きいと言うことでした。“もっと気持ちを楽にさせてあげなくては”と思い“自宅での生活が無理になったらその時には施設を利用しましょう”とお母さんの背中を押す中で、訪問時の話題は自宅に帰る為の相談に変わっていきました。
現在、娘さんとの生活を始められて4ヶ月程経過しています。話をする事の出来ない娘さんですが、お母さんの「○○ちゃん 部屋暑くないかー」「寒くないかー」「なに泣いてるんやー」「もううるさいなー大きな声で騒いでからー」 等と親子で喧嘩しながら過ごしておられます。
娘さんのいなかった頃の部屋は、ベットも無くガランとした殺風景なものでした。
今は、看護師さんやヘルパーさん、娘さんが大声で騒ぐ訪問入浴など…とても賑やかです。何より主を迎え入れる事ができたその部屋は、寒くなったこの季節なのに温かく微笑ましい風景に変わっています。お母さん、これからもご苦労もあるけれど喧嘩しながら頑張って!…良い年を迎えて下さいね。