訪問看護に花は咲く36

201608-d今回ご紹介するのは、北区にお住まいのAさん96歳です。ご主人を25歳の時に亡くされ現在1人暮らしです。当時は3歳と1歳に満たないお子様が2人おられ、どうやって暮らして行こうか途方にくれたそうです。そこでAさんは大学に行き、大学院まで進まれ臨床心理士の資格を取られました。そして、90歳まで臨床心理士として働いて来られました。お子様も大学まで進まれ一人はお医者様をしておられます。当時を振り返ってみると「必死で頑張った、母も居てくれたのでここまで来られたのよ」と言われていました。

元来明るく前向きなAさんから愚痴は聞いたことはありません。訪問するといつも笑顔で迎えて下さいます。ここまで頑張ってこられたお話を聴くと頭が下がる思いです。時々、Aさんに悩みを聞いて貰う事があります。最近、認知症も出てきており同じ事ばかり話されますが、一生懸命アドバイスして下さいます。Aさんのお話を聞いて、子育ても介護も誰かの支援が必要なのだと思いました。これからもご利用者様、ご家族様の信頼関係を大切にして支援して行こうと思っています。

訪問看護に花は咲く35

201606-1北区の町を歩いているとお一人で散歩をされているご高齢の方をよく見かけます。
何気ない日常の一場面に見えますが、わたしたち看護師は「一人で大丈夫かな?道に迷って困ってらっしゃらないかな」と常にアンテナを張っています。
町の中には認知症の方もいらっしゃる可能性があるためです。

そんな今日、コンビニエンスストアの前で一人の女性の方が右に進んだり左に進んだりと、道に迷っているかのような素振りをされていました。
推定年齢はおそらく80~90歳代。「もしかして道がわからなくなってしまったのでは・・・」今にも雨が降りそうな曇り空だったのでとても心配になりました。
そんなときサッとかけよってきた若い女性。「大丈夫ですか?」と声をかけ、手を差し伸べている姿が見られました。よーく見るとその若い女性は、私たちのステーションのスタッフでした。
私は思わず「(さすがだなぁ)」と感じました。
人に声をかけること。簡単のようですがとても勇気がいることだと思います。
「あの人気になるけど、声までかけるのはちょっと…」、「もしかしたら困ってはらへんかもしれへんし」実際には困ってない方もいらっしゃるかもしれません。
ですがその声かけで救われる方も必ずいらっしゃるのではないかと思います。

少しの勇気をだして、近隣の方へ「どうされましたか?」のその一言が地域を”見守る・支える”大きな力になると感じました。

訪問看護に花は咲く34

~ご近所の底力~

05houmon私たちの訪問看護ステーションは京都市北区にあり、賀茂川沿いの街道を訪問先に向かってバイクで移動することがあります。

冬の寒い朝、Mさんが賀茂街道を散歩しておられるのを見つけました。Mさんは賀茂川の近くにお住まいです。昨年奥様を亡くされ、今は一人で暮らしておられます。週1回の訪問では、一人暮らしに不自由なことや困っていることはないか、体調はどうかなどの確認をします。

「Mさん、おはようございます」「はて?あんた、誰やったかいな~?」「血圧を測りに来ている看護師ですよ」「そうやった、そうやった。ちょうどよかった。たまたま家におったんや」

毎回こんなやりとりで始まるMさんの訪問ですが、時々留守のことがあります。賀茂街道を歩いておられることもあるので探しに行ったり、再度訪問し直したりするのですが、そんな私の姿を見かけるとお隣の方や民生委員さんなどが声をかけて下さいます。

「最近は出町柳まで散歩に行ってはる」など近況を教えて下さり「道に迷わはることは今のところないみたい」と気にかけて下さっています。

年齢を重ね介護が必要になった時、このまま住み慣れた家や地域で暮らし続けることができるのかどうか・・・誰もが直面する現実です。Mさんには訪問看護以外にもケアマネージャーやデイサービスのスタッフが関わっています。しかしこれらの専門スタッフよりも頼りになるのは昔からの顔なじみのご近所の方々。いつも目配り、気配りでMさんを支えて下さっています。Mさんの生活を見守り、「住み慣れた家で暮らさはるのが一番ええと思いますよ」と。

そんな一言に胸が熱くなり、「ご近所の底力」に頭が下がります。これからも地域での見守り、よろしくお願いします!