訪問看護に花は咲く18

1502-a私は、訪問看護をしている看護師です。
訪問看護業務は、排便の援助や薬の管理、床ずれの処置など、実に多岐に渡りますが、忘れてはならないのが入浴の介助です。そして何を隠そう、私はこの入浴介助がわりと好きなのです。

夏は介助している間に汗が滝のように流れ、「自分もついでにシャワーさせてもらって、上がり際にビールでも一口・・・」という気分が味わえ、冬場は冷えきったタイルの上に素足で踏み込む緊張感なんかが味わえるという体力勝負の仕事です。

もちろん大変なことばかりではなく、背中を洗っている最中、「あ~、気持ちいい」と言ってもらえたり、お湯にドボンと浸かられた時の「ああ~・・・!」という何とも言えない声を聞いた時などは、「やっててよかったなあ」と感じる瞬間です。また、ご利用者様の身体や皮膚に異常や変化がないかなどを自然と確認できる機会でもあるのです。

お湯に浸かられる瞬間、その方の素直な思いが表現され、笑ってしまうこともあります。あるご利用者様は、「ああ~、パラダイスやな~!」
またある方は、「あんたも一緒に入り。あかんのか?」
「朝から風呂なんて贅沢やな。朝湯、朝酒、庄助さん・・・(歌いだす♪)」
        ・・・なんて方もいらっしゃいました。

お風呂に入るまでが億劫でご機嫌の悪い方も、いざ入ってしまうとニコニコ顔で上がって来られる。垢だけでなく心のトゲトゲまでも洗い流してくれる気がします。身体を拭くだけでは得られない、日本人が愛してやまない入浴の醍醐味がそこにあると思います。

住み慣れたお宅で、心も身体もほっこりとしてほしい。これからもたくさんの笑顔が見られるよう、お風呂のお手伝いを続けていければと思っています。

※何らかの理由により、入浴したくてもできないご利用者様には申し訳ありません。

訪問看護に花は咲く17

底冷えの京都に、今年も寒い冬がやってきました。
今回ご紹介するのはⅠさん。79歳の女性です。
一緒に住んでおられる娘さんは仕事があるため、昼間はIさんが一人でお留守番です。
Iさんは色白でボブカットの髪形が良く似合います。そんなかわいらしい雰囲気のIさんはとても「怖がりさん」なのです。
何をするにも「痛ないか?」「どうもないか?」「そんなんできるやろか」と不安が先に立ちます。
Iさんは足のむくみがあり、歩くのもゆっくりでシャワーをするのも娘さんの手助けがいります。「怖がりさん」なので足の爪を切らせてくれません。訪問看護が始まったころは足湯をしてIさんに「痛くないですか」と聞きながら足の爪切りをしていました。ところが、そんな「怖がりさん」のイメージをガラッと変える場面を見つけたのです。
12月からヘルパーさんがシャワーのお手伝いをして下さることになり、娘さんの希望もあり訪問看護では家から出て歩く練習をすることになりました。
この1年、家から一歩も外に出たことがないIさん。連れだす私も「玄関の段差は大丈夫かな」「途中で動けなくなったらどうしよう」と心配になりました。ところが、さぁ、出かけるぞ!となると私の心配を横に、段差も上手に上がり下りでき、家の前のお地蔵さんに手を合わせ「外に出るのは今年のお正月以来やわぁ」と大喜び。歩くペースも家の中よりずっと速い。意外と大胆!
何よりも驚いたのはご近所の方が次々と寄って来られ「久しぶりやなぁ」「たまには顔見せてや」と一緒に喜んでくださる人気ぶり。Iさんの人柄ですね。
散歩を始めてからIさんの「怖がりさん」は少しましになり、風の冷たい日でも「そこまで行ってみよか」と積極的です。私の方は相変わらず「大丈夫かな」と心配しながらですが・・・。
12-2

訪問看護に花は咲く16

201411-2
今月はご夫婦2人暮らしで、背の高いハンサムなご主人を介護されている奥様の紹介をします。

82歳のRさんは現在寝たきりで、胃瘻から注入食で栄養をとられています。24時間365日の介護が必要なご主人。ホトトギスの可愛い花が咲いている庭を見ながら玄関を入ると、いつもきれいに掃除されているご主人の部屋があります。
お部屋に入ると、お元気なころや若い頃の写真がデジタルフォトフレームの画像で流されており、私たちの目も楽しませていただけます。
201411-3「若い頃一所懸命働いて、今からやという時に病気になってしもて・・・」と話される奥様。ご主人をとても大切に思われていることが伝わってきます。ご主人のデイサービス利用中に買い物に行かれるとの事。それ以外は、ずっと自宅でご主人の介護をされています。
奥様の日々の介護について感動していると「そんなこと言われたら手が抜けません」と笑っておられますが、介護も家事も手を抜いておられるようにはとても見えません!!私達看護師は、奥様の介護に対する姿勢に頭が下がる思いです。

そんな奥様がこれからも、大切なご主人といつまでもお元気に在宅で過ごせるよう私たちはお手伝いしたいと思っています。
これからも色んなお話を聞かせて下さいね。