寄り添うこと・・・(45)

災害時の避難を考える

東日本大震災や、熊本地震のように大規模な災害は今だ記憶に鮮明に残っている。気候の変動によるのかゲリラ豪雨や今年7月に島根県や福岡県、大分県に出された大雨特別警報は対岸の火事ではないという思いで、テレビで繰り返し放映される恐ろしい風景に見入ってしまいました。

今年3月に三重県四日市市の笹川内科クリニック 山中賢治先生の話を聴く機会がありました。H20年に人工呼吸器を装着したALS患者さんの避難訓練を地域の方と共に初めて実施して以来、毎年先頭に立って実施しておられるそうです。何事もやってみないと始まらない。始まってみると消極的だった本人が積極的に意見を言い、住人の方たちも地域に災害弱者と言われる人が地域にいて、自分たちに何ができるか一生懸命に考えてくれるようになったそうです。高齢の女性は「私は年だから何もできないけれど、助けを呼びに行く事が出来る」と言ったそうです。そんな地域って素敵ですね。

葵会総合ケアステーション居宅支援事業所にもひとり暮らしや高齢世帯、ひとりで避難できない人がおられます。非常時の避難については本人様や家族様にも考えて頂き、避難場所など事前に確認をしておくことと共に、「徘徊模擬訓練」とともに地域を巻き込んだ避難訓練の実施も必要だと切に思いました。

寄り添うこと・・・(44)

「介護保険改定で何が話し合われている?」

3年に1度行われる介護保険改定ですが、2018年は医療報酬と同時改定の為、大規模改定になるといわれています。特にポイントとあげられていたのは、要介護1、要介護2の軽度要介護者に対する訪問介護の「生活援助」サービスを介護保険から切リ離すという案です。2016年度改定では含まれることはなかったのですが、今回の議論では話し合われています。

また、先に介護保険から切り離されることになった要支援の方の訪問介護と通所介護は、国のスケジュール通りに市町村サービスに移行していません。要支援者対象の訪問介護や通所介護から撤退した介護事業者も多く、サービスが不足している地域も多いようです。ここで更に要介護者の「生活援助」まで切り離すことになれば混乱は益々ひどくなるのは明らかです。そのため、今回の改定では見送られましたが、先送りにされただけで今後も議論されていくこととなります。

訪問介護のヘルパーによる「生活援助」とは、ただ単に掃除、洗濯、調理などの生活行為を代行しているわけではありません。訪問時の挨拶から、利用者の体調の変化など観察し、掃除をしながら生活状況を把握、調理の間に話などして本人の心身の状況把握に努め、専門性をもって本人の状態や生活について評価するという援助を行っています。単に家事代行サービスで代替できるものではないのです。訪問介護利用により何とか生活できている方も多いこと、重度化を防ぐという観点からも必要なサービスだと思います。

介護保険改悪について、利用者、利用者家族の実態を明らかにして生活がどう脅かされているのか声を上げていく必要があると思います。

寄り添うこと・・・(43)

介護保険制度のまたもの改悪に遭遇

比叡山ガーデンミュージアムにて

知らない間になんでも通る国会~改正介護保険法が今国会で成立~

ケアマネジャーになって15年。子供は巣立ち、いつしか自分も親を介護する年齢になりました。介護保険法第一条では、介護が必要な状態になっても尊厳を保持し、能力に応じ自立した生活を営めるよう必要な給付を行うことが掲げられています。この大原則に反するような改定がこの15年間粛々と進められてきました。そして今「改正介護保険法」が衆議院で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決され、参議院での審議を経て成立する見通しです。

どこまで切り捨てたら気が済むの?~法案の柱とその内容~

法案は「地域包括ケアシステムの推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」の観点のもと、以下の5つを柱にしています。
1. 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化
2. 医療・介護の連携
3. 地域共生社会の実現
4. 現役並み所得者の負担割合を3割(2018年8月から施行予定)
5. 介護納付金への総報酬割の導入(2017年8月から段階的に導入)
「自立支援・重度化防止」というのは聞こえが良いでしょうが、そのための給付適正化(給付抑制)に向けた施策や目標を市町村に作らせ、その達成状況に応じて国が交付金を支給するしくみのことを指します。言い換えれば財政優遇(インセンティブ)による市町村への給付抑制の押し付けです。大阪の大東市(人口12万人)では、すでに「自立支援」に名を借りた介護サービスからの「卒業」を強要し、必要なサービスを削られる深刻な状況が生まれていることが報道されました。(2017年5月11日しんぶん赤旗)誰もが人の手を借りずに、自立した生活を営みたいと願っています。しかしその気持ちを逆手にとって、私たちにとって一番身近な自治体に、給付費削減を競わせるような制度、介護度が下がればサービスが使えない、あるいは制限されるような制度に作り変えることは、介護保険法の目的に照らしても許されることではありません。
私自身が15年前とは違う衰えを感じ、先行きに不安が募る毎日です。高齢になるとなおさらのことだと思います。しかし脳は死ぬまで発達するとも聞くのです。いろんなことに興味を持ち、学び、現実を直視しながらも諦めない力、声に出す力を発揮できたら、或いは私たちがその力を借りてもっともっと発信していけたら、制度は良くなるし世の中も良くなるのではないかと思うのです。