寄り添うこと・・・(96)

先日一人の利用者さんが逝った

利用者さんのお母さんのケアマネでもあったことから、付き合いは約5年ほどになる。
お母さんを送り、自身の生活を立て直し就労に舵を切った矢先に体調の変化があり入院、病気がわかった。癌だった。いつも強がった口調で、助言をしても自身の尺度があって、すんなり受け入れる事はなかった。
特に、家の片づけは嫌がった。広告物や菓子の袋等部屋中に山積みとなっていた。一緒に片付けようと言ってくれる支援者の言葉に「探し物があるんや」「自分できちんと見て片付けるからかまへん」と返してきた。
自身の病気については知りたい気持ちと、はっきり言われると絶望したり、自身の死期については「母親の命日迄」「親父の命日迄」「俺の誕生日迄」最後は「息子の誕生日迄」だった。
最期は病院で迎えることも選択肢として提案があったが、「ここ(自宅)で過ごす」と譲らなかった。
ケアマネ支援としては、終末期を自宅で迎える事を想定して、通常は月1回のモニタリング訪問を週1回から10日に1回は訪問した。週3日の医療管理に週1回の訪問看護、訪問介護は週2回から毎日に増やした。「自分で買い物に行きたい」「銀行にも行きたい」と口にすれば車いすの貸与も開始した。これらのサービスを位置付けるにあたっては、通常アセスメントをして担当者会議を経てサービスが開始されるが、「ターミナル(終末期)」であること、医師と関係者が今後起こりうることに対してサービスを迅速、柔軟に利用する事が出来ることは利点であった。
この一連のケアマネ支援に対しての評価として、「ターミナルケアマネジメント加算」が算定できる。ターミナルケアマネジメント加算取得の為に頻回に訪問するわけではないが、亡くなった時「いつといつ訪問したかな?」と考えたのは確かだった。
「ターミナルケアマネージメント加算」の算定は葵会の居宅では頻回にある事ではない。
最期を過ごす場所は自分で選んで、逝く事が出来るようケアマネとして今後も支援していきたい。

私の癒し

寄り添うこと・・・(95)

 担当している利用者Sさんは、戦後まもなく京都府の児童福祉部へ勤務され、主に戦災孤児の保護を担っていました。子育てをしながらずっと仕事をつづけられ、要介護となった今でも、情勢に目を向け、趣味のスポーツ観戦や海外ドラマを楽しんでおられます。
そのSさんから、コロナ禍は戦争を思い出すとありました。世界中でたくさんの人が亡くなっているからと。「こんな時こそ政治がとても大事、国民が常に関心を持って政治に参加していなければ、民主主義はあっという間に崩れてしまう。私たちは戦争という過ちを絶対に繰り返してはいけない。」と、まっすぐな瞳で語られます。
 メディアでは自民党の総裁選が毎日取り上げられていますが、衆議院議員の任期満了は今年の10月21日、まもなく総選挙があります。自分たちの生活は政治と密接にかかわっています。「選挙に参加しないなんてとんでもない、たとえ寝たきりになっても、投票だけは行く」と、Sさんは言います。

何年も前に行ったコスモス畑 もうすぐ綺麗に咲くころかな…

寄り添うこと・・・(94)

担当しているTさんは一人暮らしの女性。要介護5で生活保護を受給されています。自力で歩行ができず、家にいる時は終日ベッドで過ごされています。
4月からの介護報酬改定で様々な加算が上積みされたこと、ベッド上の排泄のため臨時でヘルパーが支援することもあり、支給限度額を度々オーバーするようになりました。限度額が超えないようにデイサービスを中止する等で対応してきましたが、週2回のデイサービスでの入浴ができなくなると、清潔が保持できず皮膚のトラブル等も発生します。ケースワーカーさんと相談し、「他人介護料」という制度を活用することになりました。

他人介護料とは、「介護保険、介護扶助及び障害者施策による居宅介護を利用可能限度まで活用し、それでもなお、介護需要が満たされない場合において、家族以外の者から介護を受けることを支援するために行うものである」(平成12年3月31日厚生省通知)とされています。この規定は今も変わらず適応されています。結果的に毎月支給限度額を超えた自費分はいったん本人がサービス事業所に支払い、翌月返金されるという流れになりました。

私たちケアマネジャーは、様々な制度を活用していますがその細部まで把握しているわけではありません。だからこそ困ったときに相談できる専門家との関係づくりが大切だと感じました。もちろん制度を知らなくても良いわけではありませんが、福祉には福祉の、障害には障害の、介護には各分野での専門家集団がいます。ケアマネジャーは利用者の「最後まで自分らしく生きたい」を代弁する役割があり、その実現のために多くのスタッフの力を借りています。しかしこれも制度あっての実現、介護保険制度をよりよくしていかなくてはならないと思います。介護報酬とともに支給限度額を引き上げること、1割負担~3割負担の定額負担制度を見直すこと等課題は山積みです。
何より命は平等であり、自分らしく生きる事は万人に保障される権利であることを、ケアマネジャーとして発信し続けたいと思います。

3年前に行った沖縄。今度行けるのはいつのことかな・・・